Netflix「事件現場から: セシルホテル失踪事件」─“死のホテル”がもたらす暗黒史とエリサ・ラム事件の陰謀とは


Netflixは実話を基に描くドキュメンタリー「事件現場から: セシルホテル失踪事件」(原題:Crime Scene: The Vanishing at the Cecil Hotel) を2021年2月10日に世界独占配信する。

同シリーズは、連続殺人鬼の隠れ家や数多くの変死事件が発生したことで知られる、ロサンゼルスで最も不吉で悪名高い『セシルホテル』が舞台となっている。中でも悪評をさらに高めた大学生エリサ・ラムの謎に満ちた失踪事件を4部構成のドキュメンタリーで迫る。

監督は「殺人鬼との対談: テッド・バンディの場合」を手掛けたジョー・バーリンジャーが現場を検証する。

ここでは配信に先駆けて、舞台となる『セシルホテル』のこれまで語られた黒歴史を振り返る。


『セシルホテル』がロサンゼルスにオープンする

▲セシルホテルの外観 (Image: AFP via Getty Images)

1924年、ホテル経営者のウィリアム・バンクス・ハナー、チャールズ・L・ディクス、ロバート・H・シェープスは、当時ホットスポットとして注目されていたロサンゼルスに目をつけ、観光客やビジネスマンをターゲットにしたホテル事業計画に着手した。

その後『セシルホテル』は1927年に開業。世界でも類を見ない犯罪、乱行、死に結びつくホテルになるとはこの時誰が想像できただろうか…。

そして、世界大恐慌の影響でホテルは苦境に陥る─。


開業初期から自殺者が多発するホテルとして悪評が立つように…

最初に報告された自殺は、マンハッタンビーチに住む46歳の男性W.K.ノートンによるものだった。毒を含んだカプセルを飲み込み、部屋で遺体が発見された。

その後も宿泊客が部屋の中で喉を切り裂いたり、窓から転落死したりと様々な自殺や不審死が発生した。

一方で、売春婦が客と待ち合わせをしたり不倫相手と密会する場所として利用が激増していったという。


ホテル周辺はファッショナブルなスポットに発展していったが、スキッド・ロウと呼ばれるブロックではホームレスや薬物中毒者が多く住むようになり、ホテルは再び不評を買っていく─。


アメリカ史上最も悪名高い殺人事件の一つ『ブラック・ダリア事件』にも関連が?!

▲当時22歳で殺害されたエリザベス・ショート (Image: Hulton Archive)

女優志望だったエリザベス・ショートは、殺害される直前にホテルのバーにいたという目撃情報がある。

後に、少し離れたレイマート・パークで腰から二等分に切断された遺体が発見されている。

この殺人事件は現在も未解決のままだ。


▲1948年セシルホテル屋上からの眺め(Image: Corbis via Getty Images)

セシルホテルに関係する自殺者が予想を超えた数に達し始め、ホテル側は長期滞在者= “自殺者 “と呼ぶようになる。

当時27歳のポーリーン・オットンは離婚した夫と言葉を交わした後、9階の部屋から飛び降り自殺を図った。しかし偶然に通りを歩いていた老人を巻き込み殺害してしまう悲惨な事件が起こった。

元電話交換のゴールディー・オズグッドが不可解な死を遂げた。ホテルの長期滞在者であった彼女は部屋でレイプされ、刃物で刺され、首を絞められたという。これは現在も未解決の殺人事件として扱われている。

その後もスキッド・ロウ地区はホームレスの増加や犯罪が多発し、さらに無法地帯と化していった。この治安の悪さはセシルホテルにも波及していく─。


またも不名誉の烙印…連続殺人鬼の巣窟『セシルホテル』

▲シリアルキラーのリチャード・ラミレス、通称『ナイトストーカー』(Image: Getty Images)

1980年代半ば『ナイト・ストーカー』と呼ばれた連続殺人犯リチャード・ラミレスがこのホテルに宿泊したと報じられた。

ラミレスは、カリフォルニアを中心に多くの人々を襲い殺人、強姦、誘拐、強盗、などを働き悪名を馳せた。その後13人を殺害した罪で死刑判決を受けた。

▲記者会見をするジャック・ウンターベガー (©️biography.com)

ドイツ、オーストリア、チェコスロバキア、アメリカで国を跨ぐ殺害を実行してきた連続殺人鬼ジャック・ウンターベガーも『セシルホテル』へ滞在したことが確認されている。

ウンターベガーは1件の殺人で有罪になったが、仮釈放中に9件の殺人を犯している。


その後、フレッド・コルドバ率いる不動産グループが2,600万ドルでホテルを買い取った。しかし新オーナーによる再生計画は一筋縄ではいかず、地に墜ちた評判を回復させるのは容易ではなかった。


全米を震撼させた猟奇事件が発生する

▲セシルホテル滞在中に行方不明になったエリサ・ラム(image:Facebook)

カナダの大学生エリサ・ラムはロサンゼルスに旅行中、セシルホテルへ滞在し行方不明になった。

エリサは失踪前ホテルから一歩も外へ出た形跡がなく、捜査は難航した。

そして録画された監視カメラの映像には、彼女がエレベーターに乗りボタンを押しても扉が閉まらず、動かない奇妙な現象が映っていた。

その後も、慌てた様子でエレベーターを出入りしたり、周りを見回し、さらには腕を振り回す行動を起こしている。ある時点では、エレベーターの中に隠れるように身を潜めた姿も確認されている。

映像からエリサが消えると、なぜかエレベーターは再び動き出し扉が閉まった…。

この映像がメディアへ公開されると、様々な専門家が事件を検証し見解を述べた。前代未聞の失踪事件に、YouTubeやSNS上では一気に情報が拡散し世界中でセンセーションを巻き起こした。

▲セシルホテル屋上の貯水槽 (Image: AFP via Getty Images)

行方不明から3週間後、事件は動き出した。ホテルの宿泊客から『水が不味い』『水圧が低い』などの苦情が寄せられたため、屋上にある貯水槽の中を調べたところ、全裸になったエリサの遺体が発見された。遺体の側には衣服や所持品が一緒に浮かんでいたという。

遺体は腐敗により肥大化し、わずかに緑がかった色をしていたと報告されている。

死因の解明が遅々として進まず、発見から4ヶ月後に検死報告書が公開された。検死局によると遺体からは自殺、身体的外傷、性的暴行の証拠はないと判断され不慮の事故によるものと結論づけられている。

Image: Los Angeles Times via Getty Images

毒物検査の結果、彼女の体内には処方薬と適度な量のアルコールしか検出されなかった。この結果には前途した検死報告書と同様に現在も疑問視され続けている。

結局エリサの死をめぐる陰謀説は、違法薬物の影響で苦しんでいたというものから、精神病を仄めかすエピソード、防犯カメラに映ったエリサを追いかける人物が犯人だという主張に至るまで多岐にわたった。

中には警察に提出する前に映像を改ざんしたと非難する者さえいた。これはホテルのスタッフによって否定されている。

現在もこれらの陰謀説は証明されていない。


セシルホテルの今

▲現在はセシルホテルから『ステイ・オン・メイン』に名称を変更している(Image: AFP via Getty Images)

エリサ・ラムの奇妙な事件以来、セシルホテルの悪評は払拭できないまま続いている。

それでも2017年には、カリフォルニア州ロサンゼルスで10-0の満場一致投票で、歴史文化記念物に市議会から指定された。

現在は客室の一部をアパート化する新事業の導入や建物を改装する計画が立ち上がっている。

ちなみに人気アンソロジーシリーズ『アメリカン・ホラー・ストーリー』の “ホテル” と題したシーズン5では、セシルホテルをモデルにしたことで有名だ。

「事件現場から: セシルホテル失踪事件」は、2021年2月10日に配信開始する。

「事件現場から: セシルホテル失踪事件」
忌まわしい歴史を持つセシルホテルの悪評をさらに高めたエリサ・ラム失踪事件。「殺人鬼との対談: テッド・バンディの場合」の制作者がその現場を検証する。【視聴する
[Photo]©︎ 1997-2021 Netflix,Inc.

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