ライアン・マーフィーがまたもや猟奇的殺人犯の物語を描こうとしている。『アメリカン・クライム・ストーリー』シリーズで『O・J・シンプソン事件』と『ヴェルサーチ暗殺』を取り上げたように、次なる実在する凶悪犯は、世界でも類を見ない連続殺人鬼 “ジェフリー・ダーマー”が題材だ。
「ダーマー」(原題:DAHMER – Monster: The Jeffrey Dahmer Story)と題されたこの限定シリーズは、2022年9月21日よりNetflixで配信開始。全10話のエピソードで構成され、犠牲者の視点からストーリーが語られている。
■ジェフリー・ダーマーとは何者か
ジェフリー・ダーマーは米国で最も有名な連続殺人犯のひとりで、1978年から1991年の間に青少年17人を誘拐し性的暴行の上、殺害、屍姦しカニバリズムを行ったことで知られている。
ウィスコンシン州ミルウォーキーで生まれ育ったこともあり “ミルウォーキーの食人鬼”の異名を持つ。
幼少期〜青年期
1960年5月21日に生まれたダーマーは、友達の少ない内気な少年として知られ、幼い頃から動物の死骸や骨の鳴る音に興味を示していた。
1978年に高校を卒業し、オハイオ州立大学でビジネスを専攻したが、アルコール中毒が原因で3ヶ月しか通わず退学勧告を受けることに。成績は散々だったという。
1979年1月米陸軍へ入隊。テキサス州サンアントニオのサム・ヒューストン基地で専門医としての訓練を受けたが、1981年アルコール依存症で除隊した。その後就いた仕事でも、同じようなトラブルを起こしている。
最初の犠牲者
ダーマーはゲイで、1978年から1991年の間に17人の男性や少年を殺害し手足を切断した。最初の犠牲者はもうすぐ19歳を迎えようとしていたスティーヴン・マーク・ヒックスという青年だった。
1978年6月18日、オハイオ州・チペワ湖で開催されたロックコンサートへ向かう途中ダーマーと出会い、ビールを飲むという口実で自宅へ立ち寄ったところダンベルで殺されてしまった。遺骨は粉々にされ、ダーマーが幼少期に住んでいた家の裏に撒かれた。ダーマーは当時18歳。
逮捕の経緯
1991年7月22日、ダーマーはヌードを見るため金銭を支払い、トレイシー・エドワーズ(32)を自宅に招き入れる。しかし心臓を食べようとする異常行動に命の危機を感じエドワーズはすぐさま逃亡を図る。巡回中の警察に助けを求め、ダーマーは逮捕されたのである。
敷地内で複数の遺体が発見され、バラバラ死体の写真も大量に押収された。ダーマーは、取り調べに弁護士を同席させる権利を放棄し、『この惨劇を作り出したのは自分であり、終わらせるために何でもするのが筋だ』と述べ、すべてを自白することを望んだ。
なぜ殺人を犯したのか?
ミルウォーキーの食人鬼は、尋問の中で欲望に駆られて殺人を犯したことを認めている。『どんな犠牲を払ってでも誰かと一緒にいたいという、終わりのない欲望だった。いい男と…それだけだ』
どんな障害があったのか?
ダーマーは、境界性パーソナリティ障害、統合失調型パーソナリティ障害、精神病性障害と診断されたが、裁判では『法的には正気』であると認定された。
ダーマーの刑期
ウィスコンシン州で犯した16件の殺人のうち15件で有罪判決を受け、1992年2月17日に終身刑を宣告された。その後、1978年にオハイオ州で起こした殺人事件が追加され、16件目の終身刑を言い渡されている。
ダーマーの最期
1994年11月28日、ダーマーはウィスコンシン州ポーテージのコロンビア連邦刑務所で、同収容者のクリストファー・スカーヴァーに撲殺された。
この日、ダーマーはスカーヴァーとジェシー・アンダーソンの3人でシャワー室を清掃していた。刑務官が不在の20分間に起きた出来事であった。
ダーマーはスカーヴァーに51cmの金属棒で頭や顔を強く殴られ、発見時は生きていたが、病院に到着して1時間後に死亡が確認された。アンダーソンも同じ器具で殴られ、2日後にその傷が原因で死亡している。
■恐ろしき連続殺人犯が、長きにわたり逮捕を逃れ続けられたのはなぜ…
これまでジェフリー・ダーマーを題材にした物語は、長編映画やドキュメンタリー、書籍、TV番組などあらゆる媒体で伝えられてきた。
2017年に映画化された『My Friend Dahmer』(日本未公開)のように連続殺人犯そのものを描くスタイルとは異なり、ライアン・マーフィー版はその男のおぞましい習慣と心理に追った全く新しい視点から描かれている。
そして、彼が何年にも渡り殺人を繰り返すことを許した警察の無能さと無関心さに深く切り込む…。人種差別、組織体制の怠慢や隠匿によって影響を受けた被害者を軸にし、不当な犯罪を暴いていく─。
■そっくり!実在する人物とキャストを比較
キャストの描写が、シリーズのモデルとなった人物にどれだけ寄せているかご覧ください。
主人公のジェフリー・ダーマーを演じるのは、エヴァン・ピーターズ。映画『X-MEN』シリーズのクイックシルバー役で人気を博し、ライアン・マーフィーとは『アメリカン・ホラー・ストーリー』以来の再タッグとなる。
ピーターズは、役作りでダーマーの歪んだ精神に飛び込むのは『すごく怖かった』と明かしている。
被害者のひとりで生還を果たしたトレイシー・エドワーズ 役 には、『ドロップアウト』『フューチャーマン』の出演で知られるショーン・J・ブラウン が務める。
『スクリーム・クイーンズ』『私の”初めて”日記』出演のニーシー・ナッシュが演じるのは、ダーマーの隣人グレンダ・クリーヴランド。
警察にダーマーの容疑を訴える姿や、アパートの騒音がどこから来ているのか突き止めようとする姿が印象的だ。
1980年代を代表する女優のひとりであるモリー・リングウォルドがジェフリー・ダーマーの継母シャリ役を、『俺たちステップ・ブラザース -義兄弟-』の俳優 リチャード・ジェンキンスが父親のライオネルを演じている。
マーフィーは長年の共同クリエーターであるイアン・ブレナンと共に脚本・制作を手掛ける。エピソード監督にはカール・フランクリン、ジャネット・モック、パリス・バークレイが名を連ねている。
限定シリーズ「ダーマー」は、2022年9月21日よりNetflixで配信開始。
作品ページ・予告編は▶︎こちらから
ジェフリー・ダーマーは逃亡者ではないのだから、『逃亡劇』を記述するのは間違いです。