─『ダーマー』は始まりに過ぎない…
ライアン・マーフィーとイアン・ブレナンが贈る〈モンスター・アンソロジーシリーズ〉の第2弾は、90年代に全米を震撼させたメネンデス兄弟の事件を掘り下げる。
第1弾の『ダーマー: モンスター: ジェフリー・ダーマーの物語』は2022年に登場し、配信開始から60日間で10億視聴時間というモンスター級の数字を叩き出し、Netflixで最も視聴されたTV番組(英語)の歴代ランキング第3位を記録。現在もその座をキープしている。
前作の大成功を受け、第2弾でも実在するモンスターにスポットライトを当てていく─。
「モンスターズ: メネンデス兄弟の物語」(原題:Monsters: The Lyle and Erik Menendez Story)と題されたこの犯罪ドラマシリーズは、2024年9月19日よりNetflixで独占配信開始される。
■Netflix制作の「モンスターズ: メネンデス兄弟の物語」とは?
このシリーズは、1989年、ビバリーヒルズの自宅で両親を惨殺し有罪判決を受けたメネンデス兄弟の人生に迫る実在の事件に基づく物語だ。
(現在、2人とも第一級殺人罪で有罪判決を受け、仮釈放の可能性がない終身刑を言い渡されている)
公判中、兄弟は両親を殺害した動機に長年の虐待を挙げ、一方検察側は一族の財産を手に入れるためだったと主張した。
ファーストルック到着!
殺人現場になるとは知らず夫婦がリビングでくつろぐ様子…法廷に立つ険しい表情のメネンデス兄弟…最新の場面写真を見てみましょう。
[Source Images] ©︎ 1997-2024 Netflix,Inc.
■キャスト・登場人物
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実際の事件はどのように報道されたのか?
全米を震撼させた生々しい事件現場…
そしてメネンデス兄弟の現在とは─?
■メネンデス一家の知られざる衝撃の真実…親殺しの動機に迫る
1989年8月20日、ホセ・メネンデスとキティ・メネンデスはビバリーヒルズの自宅で射殺された。事件から約7年…3回の裁判、幾度にも渡るメディアの報道を経て、彼らの息子であるライル・メネンデスとエリック・メネンデスは殺人罪で有罪となり、仮釈放の可能性のない終身刑を言い渡されている。
この殺人事件は、家族の悲劇、ハリウッドとの結びつき、興味深い証言、そしてテレビが総力を挙げて報道したことにより20世紀後半で最も有名な殺人事件のひとつとなった。裁判が進むにつれ、ライルとエリックが両親を殺したことに疑いの余地はなくなったが…。
その動機についてはまた別の話である。
ホセとキティのアメリカンドリーム
メネンデス一家は、1980年代におけるアメリカン・ドリームの典型だったと言える。キューバ生まれのホセは、1950年代のキューバ革命後、16歳でアメリカへ移住し大学奨学金を得るまで従兄弟の屋根裏部屋で暮らした。
在学中、“キティ”の愛称で親しまれていたミスコンの女王メアリー・ルイーズ・アンダーソンと恋に落ち、1963年に結婚。その後、ニューヨークに移り住み、皿洗いから一転、若くしてエンターテインメント業界の重役にまで上り詰めたのだった。
レンタカー会社ハーツの米国事業を率いた後、ホセは80年代前半をRCAレコードの幹部として地位を築いた。UKバンドのデュラン・デュランや、ユーリズミックス、MENUDO(メヌード) といった80年代にアメリカで爆発的な人気を誇ったアーティストの契約にも携わったという。
当時一家は、息子のライルとエリックと共にニュージャージー州プリンストンからロサンゼルスに引っ越した。
殺害現場となった家はビバリーヒルズでも有数の高級住宅街に位置し、その時期はマイケル・ジャクソンやエルトン・ジョンが住んでいたそうだ。
このように裕福な家庭で生まれ育ったメネンデス兄弟は、レーガン時代におけるアメリカの模範的な理想像を当てはめたような一面があった。
兄のライルはテニスの名プレイヤーで、表向きは敬愛する父と同じように実業界でキャリアを積む運命にあり、弟のエリックは父親の執拗な干渉によりテニスの腕を上げ同年代の全米ランク選手まで名をあげた。ある意味、彼らは成功を手にする以外に選択肢はなかったのだ。ホセはスポーツでもそれ以外のことでも、子供たちをとことん鍛え上げる“超スパルタ教育の親” としてよく知られていた。
当時をよく知る水泳チームの元コーチは『ホセは非常に競争心が強く、(エリックを)成功させようとあらゆる手を尽くしていた』とロサンゼルス・タイムズ紙に語っている。『ただ、あまりにも威圧的すぎて逆効果となった。エリックは何をしてもうまくいかなかったからね…。彼は自分に自信が持てなかったように思える』
ロサンゼルスに越してからというもの、エリックは10代の反抗期をとことん満喫し、1988年には相次ぐ強盗事件へ手を染めた。刑務所に入ることは免れたが、ジェローム・オジエルのセラピーを受けるよう裁判所から命じられている。
一方ライルはプリンストン大学に入学したが、盗作を犯し1年間の停学処分を受けた。
陰惨な犯行現場
当時45歳のホセと47歳のキティは、2丁の12口径ショットガンから放たれた15発の銃弾によって殺害された。その遺体は身元が判別できないほど損傷が激しかったという。
あまりに残虐な犯行であっため、マフィアの犯行と考えた警察は、初動捜査でホセに恨みを持つポルノ界の重役などの対立関係にあった人物に焦点を当てた。
兄弟の証言によると、事件が起きた夜は映画を観に出かけたがエリックの身分証明書を取りに自宅へ立ち寄ったと話している。そこで両親の無残な遺体を発見し、911に通報したのだと…。
通報を受けた警官が現場に入る前、当時18歳だったエリックが芝生の上で泣き崩れているのを目撃されている。
事件発生から数ヶ月間、メネンデス兄弟は “両親の殺人現場に居合わせた息子” とは思えないような行動を繰り返していた。その姿はまるで宝くじに当選したかのよう…。
ホセは死亡時に推定1400万ドルの資産を保有していたが、息子の手によってわずか半年で70万ドルを使い込まれたのだった。
当時21歳だったライルは、その大金でロレックス、ポルシェ、大量のアパレル、そして事件前に住んでいたプリンストンのレストランを購入。対してエリックは、ジープ・ラングラー、5万ドルの専属テニスコーチ、ロックコンサートへ4万ドルの投資と、堅実な使い道を選んでいる。
2人はさらに多額の遺産が手に入ると考え、異国の地で休暇も楽しんでいたという。しかし父親に掛けられていた500万ドルの生命保険は、手続き上の問題で受け取ることはできなかった。
録音された兄弟の告白
事件後、ジェローム・オジエルはかつての患者エリックに接触しカウンセリングを再開した。ほどなくして、エリックは両親殺害を告白。
しかし医者ともあろうものが、オジエルは当時不倫関係にあったジュダロン・スマイスにその自白を打ち明けていた。(後に彼女は裁判で大きな役割を果たすことに)
カウンセリングはその後も続き、オジエルはついにエリックとライルの両者から殺人を自供する録音テープを手に入れた。エリックは母親を 『苦しみから解放するため』犯行に及んだと言い、ライルは弟との共犯であることを認めた。
その頃、オジエルとスマイスの愛人関係は拗れていた。その恨みからスマイスは彼から虐待・暴行されたとビバリーヒルズ警察へ駆け込む…。その際メネンデス兄弟が両親の殺害を自供したことを警察に話し、オジエルが録音テープを持っていることを暴露した。
1990年3月8日、ライル・メネンデスは逮捕された。当時、テニスのトーナメントでイスラエルにいたエリックは、マイアミ、ロサンゼルスと移動し、3月11日に警察へ出頭した。
自白が録音されたテープが医師と患者の秘匿特権に該当するのか、それとも裁判の証拠として認められるのか、検察側とメネンデス側の弁護士との間で訴訟と上訴が繰り返され、丸2年を要した。
最終的にカリフォルニア州最高裁判所は、3本のテープのうちライルが罪を認めたテープを含む2本を裁判で使用する権利があるとの判決を下す。
全米を揺るがすセンセーショナルな裁判
1993年、裁判が開始。兄弟それぞれに別の陪審員がつき、その模様はCourt TVと呼ばれるケーブルネットワークで一部始終放送された。当該ネットワークは、裁判の中継だけでなく特集や取材を連日連夜繰り返していたため、国民の関心は日に日に高まり、遂にはゴールデンタイムのメロドラマをも凌ぐ人気を獲得した。
スキャンダルで崩壊した裕福な一家、謎めいたイケメン兄弟、残虐な殺人、そしてサイコドラマ…お茶の間を惹きつける要素としては充分だ。
『メネンデス裁判は、たとえ著名人でなくても状況がドロドロで劇的ならば、大衆を魅了することができる。良い意味でも悪い意味でもそれを実証した裁判だった』と、Court TVの創設者であるスティーブ・ブリルは2017年にRolling Stone誌に語っている。
『その後も似たような裁判はたくさんあったが、あれは本当に特別だった。重大な裁判という注目度の高さから大勢が興味を示していた』
この第一審で、検察側はメネンデス兄弟が遺産目当てで殺害したと主張したが、ライルとエリックは正当防衛だったと述べている。
2人は、父親が息子に過度の期待を抱き精神的虐待を与えていただけでなく、ライルは6歳から8歳まで、エリックは6歳から18歳まで、それが長期にわたる虐待であったことを訴えた。
兄弟と並び裁判で一躍有名になったエリックの弁護士レズリー・エイブラムソンは、ライルの弁護士ジェラルド・チャレフと共に、両親の振る舞いを生々しく証言している。
弁護側は、正当防衛を主張する根拠に犯行数日前のライルと父親のやり取りを提出。弟のエリックに対して性的暴行を加えたことを父親に問い詰めたが、その時の怒り狂ったホセの反応は身の危険を感じる程のものだったと説明した。さらに、キティのアルコール依存症と薬物依存症を指摘し、その苦しむ姿は抜け殻のようだったと非難。母親失格、妻としても失意のどん底…キティは、ホセの度重なる浮気に打ちのめされていたという。
最初の裁判は6ヶ月に及んだが、ライルとエリックが殺人罪で有罪なのか、それとも正当防衛によるものなのか、陪審員の意見は一致せず結果はいずれも評決不一致に終わっている。そのため直ちに再審されることが発表された。
第二審は1995年に開かれたが、スタンリー・ワイズバーグ判事がテレビカメラの入廷を許可しなかったため、世論を騒がす事態にはならなかった。
この裁判では、兄弟が恐怖心から殺人を犯したという弁護側の主張を中心に展開されたが、ホセが虐待したという証拠が不十分であるとの判決が下された。
興味深いのは、この数年後ABCの取材を受けたメネンデス兄弟のいとこが、ライルの証言を信じていると発言し物議を醸していること。つまり性的虐待について真実を語っていると訴えたのだ。最近では、ボーイズバンドのMENUDO(メヌード)のボーカル、ロイ・ロセーロもホセの性的暴行を告発している。
意外にも二審ではジュダロン・スマイスが弁護側として、“オジエル医師が兄弟を操り自白させた” という証言した。しかし、結果は実らずライルとエリックは1996年3月21日、2件の第一級殺人罪で有罪判決を受けた。
彼らは同年7月、仮釈放なしの終身刑を言い渡されそれぞれ2年連続の終身刑を宣告されている。
メネンデス兄弟の現在
ライルとエリックは2018年まで別々の刑務所で服役し、その後サンディエゴの同じ施設で刑期を終えることが許され、現在は一緒にいる。
1989年から事件を取材してきたジャーナリストのロバート・ランドによると、兄弟は性的虐待を受けた受刑者の相談に乗っていたり、エリックにおいては複数のセルフヘルプ・グループ*を率いているという。
*セルフヘルプグループ(自助グループ)とは、同じ問題をかかえる人たちが集まり相互理解や支援をし合うグループ
また、兄弟はそれぞれ受刑者でない女性と刑務所内で結婚している。
エリックは1999年に文通相手のタミ・サッコマンと結婚。彼女は2005年に2人の関係を綴った『They Said We’d Never Make It: My Life with Erik Menendez』という本を出版し話題となった。
一方ライルは元モデルのアンナ・エリクソンと結婚したが、他の女性と文通をしていたことが発覚し離婚。しばらくしてジャーナリストから弁護士に転身したレベッカ・スニードと2003年に結婚している。
ライルは現在56歳、エリックは53歳。
[Source]Biography.com
■リリース情報
犯罪ドラマシリーズ「モンスターズ: メネンデス兄弟の物語」(全9話)は、2024年9月19日よりNetflixで独占配信開始。
作品ページ・予告編は▶︎こちらから
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