スパイク・リーと言えば黒人が社会で直面する差別構造や偏見を正面から取り上げ、数々の名作生み出した巨匠として知られている。彼と一緒に仕事をしたいと望む配給会社や映画の資金調達を見つけるのはそれほど苦労しないだろう。しかしこの「ザ・ファイブ・ブラッズ(原題:Da 5 Bloods)」の公開までの道のりは前途多難であった。
本作は、ベトナム戦争からほぼ半世紀経ち、ともに戦った4人の黒人退役軍人が、隊長の亡骸と埋められた金塊を探し出すために戦場へと舞い戻るヒューマンドラマだ。劇場公開は叶わずとも、2020年6月12日にNetflixで世界配信される。
スパイク・リーは当時を『我々は多くのスタジオに話を持ちかけたが、みんな断られた。過去にもいくつかプロジェクトを却下されたことはあるが、経験上彼らはそれを嫌いとは言わず、ただ “これは我々のためにならない” と言うだけだ。』と語る。
続けて、『私は長い間このゲームに参加している。だから仮に却下されたとしても “どうしてだ?なぜこの映画を作りたくないんだ?’” なんてことは聞かない。ただ言うのは “Thank you.” 』
『そして歩き続ける。Jay-Zのように次の道へね。だからこそ私は多くの仕事を成し遂げることができた。座って泣くつもりはない。歩き続けるんだ。』 と振り返った。
そして『Netflixしか行き場がなかった』とも付け加えた。
確かに昨今、Netflixはオスカーに匹敵するタイトルの製作を狙い有名な映画製作者を歓迎するようになった。同スタジオの「ROMA/ローマ」や「マリッジ・ストーリー」、「アイリッシュマン」での成功は映画業界にもインパクトを与え、スパイク・リーもおそらく新鮮に映り大々的な宣伝を期待したのだろう。しかし残念なことに、新型コロナウイルスの影響で映画祭の初演もなければ、プレミア公開もなかった。
スパイク・リーにとっては不本意ではあるものの、全ての人たちの予定が狂わされた今、自分も例外ではないとして『見ろ、私は文句を言ってるわけじゃない。多くの人がこの3ヶ月間コンテンツを求め続けている。たくさんの人がこの映画を観てくれることを祈ってるよ。』と喜びを表し、『将来的には、この映画を大きなスクリーンで観ることができるようになればいいね。』と希望は捨てていないようだ。
Netflixは今週から新カテゴリーの『Black Lives Matter:黒人とアメリカ』をコンテンツに追加した。これは今アメリカを中心に世界中に広まっている『Black Lives Matter(BLM=黒人の命は大切だ)』運動に敬意を込めたプロジェクト。もちろん「ザ・ファイブ・ブラッズ」もラインナップされている。
[Source]ThePlayList.net
「ザ・ファイブ・ブラッズ」2020.6.12 Netflix配信
ベトナム戦争からほぼ半世紀。ともに戦った4人の黒人退役軍人が、隊長の亡骸と埋められた金塊を探し出すために戦場へと舞い戻る。スパイク・リー監督作品。【視聴する】