Netflix映画「パワー・オブ・ザ・ドッグ」におけるフィル(演:ベネディクト・カンバーバッチ)とジョージ(演:ジェシー・プレモンス)の兄弟の関係は…控えめに言っても複雑である。
今年の第94回アカデミー賞で、作品賞や監督賞を含む12部門のノミネートを獲得した本作は、牧場を共同経営する兄弟を巡る、アメリカ社会のタブー、飲酒・人種差別・同性愛に斬り込んだヒューマンドラマだ。
兄弟の間には何十年にも及ぶ緊張が漂っていたが、ジョージが未亡人のローズ(演:キルスティン・ダンスト)と密かに結婚したことで、これまでにない亀裂が入っていった…。フィルは常にテリトリーで優位性を主張しようとする男だ。すべてを壊そうとローズの軟弱な息子ピーターを利用し、残忍で執拗な攻撃を仕掛けていくのだ。
まるでコインの表と裏のような兄弟。微妙な距離感を保つため、カンバーバッチとプレモンスは“ダンス”という特別な手法でリハーサルに挑んだという。
先日、Netflix Queueでクリスタ・スミスのインタビューを受けたカンバーバッチは、監督のジェーン・カンピオンからリハーサル中にプレモンスとダンスをするよう指示があったことを明かした。フィルがリードし、ジョージがそれに続く、といった具合に。
カンバーバッチは、『形あるアクションを一緒にとったことで、キャラクターの背景を探求することができた』と振り返る。続けて『二人の関係を知るための素晴らしい物理的な方法だ。これによって、ジェシーの体を感じ、フィルが一緒に成長し、同じベッドで眠る男の隣にいることで、お互いの匂いや感触を知ることができたんだ』と付け加えた。
『僕らは俳優としてお互いを尊敬しているけれど、あんな風に兄弟みたいな親密さを持てたことは驚くべきことだよ』
もちろん、フィルのような熟練した牧場主を演じるには、撮影中も高度な身体能力が要求されただろう。カンバーバッチは、フィルの靴(ブーツと言うべきか)が完全に馴染むため、自ら牧場で多くの時間を過ごしフィルが過ごす日常生活を体験したことを明かしている。
『皮革の加工、切断、面取り、強化、長さ調整、そして乗馬、縄跳びなど、映画の中で見られるあらゆることを練習したよ』
しかし、そのような厳しいトレーニングの道にも限界があった。フィルという男は『自分らしく戦うこと、不正と戦うこと、そして自分に忠実に生きようとする内面の葛藤が混在している』と表現しているように、フィルほど熟練したスキルを持つ人はあまりいないのだ。
しかし、牧場こそフィルの真の目的なのである。『彼は本当にすべてのエキスパートだった』と振り返る。『ただ、マスターするには不可能なリストだよ(笑)』
▶︎インタビューの全容をチェックしたい人は、クリスタ・スミスのポッドキャスト『Present Company』まで。
映画「パワー・オブ・ザ・ドッグ」配信中! 威圧的だがカリスマ性に満ちた牧場主。弟の新妻とその息子である青年に対して冷酷な敵意をむき出しにしてゆくが、やがて長年隠されてきた秘密が露呈し…。【作品ページへ】 |
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