ごちゃついてしまいがちなクローゼットの掃除がどれだけ大変か…誰もが知っていることでしょう。これまで『クィア・アイ』『KonMari 〜人生がときめく片づけの魔法〜』などの番組で、“残す山” と “捨てる山” のメリットを何年にもわたり紹介されてきた。しかし、前者の“残す”に注目する人はほとんどいない。なぜ私たちは、他でもない特定の服を持ち続けるのだろうか?何が特別なのだろうか?
そんな疑問を投げかけるドキュメンタリー「ぬくもり物語」(原題:Worn Stories)が2021年4月1日よりNetflixで配信される。エミリー・スピヴァック著のベストセラー本に基づき、『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』を手掛けたジェンジ・コーハン監督が制作する、くすっと笑えて心温まる感動の物語だ。
2010年、著者のスピヴァックは服にまつわるストーリーや思い出を集め始めた。尊敬するアーティスト、作家、デザイナー、シェフなど、米コミュニティサイトCraigslistで見知らぬ人に声をかけ、クローゼットの中の思い出の品について聞き回ったという。4年後、集めた資料を元に『Worn Stories』を出版。この本には肉体的パフォーマンス・アーティストで知られるマリーナ・アブラモヴィッチや、コメディアンで作家のジョン・ホッジマンが登場するなど多くの話題を呼び、またたく間にTimes誌のベストセラーとなった。
本作では、笑いあり涙ありの、痛ましい過去や喜ばしい出来事を文化人や才能あるストーリーテラーのインタビューを織り交ぜながら展開。アニメーションと新旧の映像が感動的な物語に命を吹き込んでいく。
「ぬくもり物語」のエピソード(全8話)では、それぞれ異なるテーマを扱っている。例えば、人生の始まりに着る服から、失った人を追悼するために着る服まで。
THE CUTのインタビューでスピヴァックは、映像化するきっかけについて以下のように語っている。
2冊目の本が発売されてすぐに考え始めました。ジェンジ・コーハンが、私の2冊目の本『Worn in New York』に登場してくれて、大きなイベントにも来てくれたのです。その時彼女は、人々がどれほど興奮していて、いかに自分のストーリーを共有したいと思っているかを語っていたわ。そして『これをショーにしたらどう?』と言ったのです。私は「はい、是非そうしましょう」と言いました。なぜって、それは私の心の中にもあったからです。
本の良さは頭の中でストーリーを描き、空白の部分をイメージしながら埋めていくことができること。しかし、スピヴァックは以前からもっと深く追及したい強い思いがあったようだ。服は触覚的なもの。実際にアイテムを見て、それについてストーリーを語る人々を見たかったのだと。
番組はヌーディストのカップルから始まる。スピヴァックはこの意表を突くアイディアについて『サプライズ』と語っている。
ちょっとしたサプライズですね。洋服をテーマにした番組をヌードで始めるなんて(笑)でも気に入っているところは、普段服を着ている私たちが、意図的に着ないことを選択した人が服を通して何を思うかを、考え・知るきっかけになるということです。
私たちはこの1年クローゼットの中身に悩まされ縛られてきた。先の見えないコロナ禍で、このシリーズは新たな光をもたらすだろうか。
私はいつもクローゼットの中には、記憶や経験のアーカイブがあるという考えを持っています。それは必ずしもブランドだからとかお金がかかっているからではなく、誰々にもらった、旅先で手に入れた、誰かを思い出したり経験を振り返るものです。
だから、この時期だからこそ思い出す機会が少しでも増えればいいなと思います。今まで見過ごしていたものや、当たり前だと思っていたものをもう少しよく見てみよう、という感じです。自分にとって本当に大切なものは何か?残したいものは何なのかを。
とっておきの一着から人生を変えた一着まで、自分にとって特別な服への想いをさまざまな人にインタビューした新シリーズ「ぬくもり物語」は2021年4月1日よりNetflixで配信開始!
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